Talk Session #3
2024.10.11
@ヒジノワCafe&Space
Guest Speaker
添谷書店
添谷 恭平さん
佐藤 一貴さん
内町工場
Facilitator
村越慧 益子町在住写真家
遠藤康一(宇都宮大学)
大嶽陽徳(宇都宮大学)
Cooperation
宇都宮大学地域デザイン科学部建築都市デザイン学科学生

Talk Session #3は、「本で繋がる本通り」と題し、本を扱う二つのお店の店主をお招きしました。お二人のお話が、本の可能性や地域の繋がりの場としての本通りを考えるきっかけとなり、 多くの来場者の方とともに盛んな意見交換の場となりました。
添谷書店





添谷書店
1901年創業の益子の歴史ある書店です。学校教材の販売を主としながら書籍文具、駄菓子等を販売しています。2024年9月からは新店舗に移転。本通りで生まれ育った添谷恭平さんが家業を継ぐ決意のもと大学卒 業後益子に戻り教材販売の外商と書店経営に力を注いでいます。

内町工場
古本と古道具、古家具などを買取・販売している内町工場。店主の佐藤さんは芳賀町出身、真岡で家業の店舗を運営したのち2011年に益子で内町工場を開業。本通り・内町にあるプラスチック製品の工場跡地を仲間とともにリフォーム。人が使い、時を経たものや本の味わいを存分に引き出し、また佐藤さんの眼差しが滲み出る店舗空間が特徴的です。
添谷書店 添谷さんのお話より
本通りで明治時代から営業し、学校教材の販売(真岡市、芳賀郡内各町への外商)を通して教育現場の先生や生徒たちを陰で支え続けています。
一方書店としての店舗も持ち続け、書籍文具・教材・駄菓子等(かつてはビデオも)を販売し、放課後の子どもたちの集う場所になっている。1990年代には雑誌・書籍の販売がピークとなったが、現在はネットでの販売やデジタルコンテンツの普及もあり書籍の販売は全国的に厳しい状況です。しかし、現社長の恭平さんは町内で唯一の新刊総合書店になったことを一つのきっかけに、町のインフラとして書店を魅力ある形で残すことを決意し、2024年9月に新店舗でリニューアルオープンしました。
子どもたちがおじいちゃん・おばあちゃんとお菓子や絵本を買いに来たり、子どもたち同士で駄菓子を買いにきてお金の計算をしたり、本好きの子は本を見ながら座って過ごしたり、子どもの居場所としての役割を果たし続けています。
添谷さんの見る本通り
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本通りは近年新規出店もあり、変化がありとても良い兆しに感じる。
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文化のまち益子として様々なコミュニティがあり賑わいを見せつつある。
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様々なジャンルの書籍を揃えデータを集め、地域の人にフィットした商品を選んでいきたい。



戦後建てられたかつての店舗(写真提供|添谷書店)

上の写真と同じ場所に立てられ2024年まで営業した店舗
(新店舗は道を挟んで向かいに建設)

内町工場 佐藤さんのお話より
店主の佐藤一貴さんが営む内町工場は、プラスチック製品の工場として使われていた建物を改装して営業しています。
建物の改装は仲間の手を借りながら多くを自力で行い工夫を重ねてきたそうです。また、元の住民の方が一部に住みながら、動線を分けて一部分でお店を始められ、その工夫が店内では見受けられます。外観は本通りに多い昭和の看板建築ですが中に入ると古い木材に囲まれ落ち着いた、静かな空間が広がっています。
古本をベースに、古い家具、本棚、ベンチ、ガラス、布、様々な古物が集められています。古本は陶芸をはじめとした美術書が充実しているほか、哲学、建築、絵本等々。古物を見る佐藤さんの視点を感じることができます。
しかし、佐藤さんは自分のセレクトを重視しているというより、古本の元々の持ち主の特徴を活かしていると話します。多くの商品を地域の住人からの買取も行っているため、元の所有者の目による選書と組み合わせを大切にし、内町工場の棚を作っているそうです。開店以来、地域のお客さんとの交流を通して熟成し続ける内町工場は、様々の住民の視点が本選びを通して反映されているのかもしれません。
佐藤さんの見る内町工場
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SNSの情報などをきっかけに町外からの来客も多い。
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お店があるとお客さんによって繋がりが広がることが多い。
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お客さんによる口コミや人のつながりが広がっている。
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最近は本通りまで足を伸ばす人も増えた。
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添谷書店で昔買われたであろう本が長い時を経て内町工場で買い取られるという本の地域循環もある。
参加者の声
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幼少期から本に触れる機会が大人になった時にも大きな影響を与える。
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書店・古書店・図書館はライバルではなく、地域全体で本に触れる場を創出することが重要。
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編集者、独立書店経営など本に関わる仕事をする方が多く本を通じたコミュニティが増えつつある。
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本に関するイベントを今後も続けたい。農業の話なども面白そう!
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本に関する企画で町外からもさらに集客できたら良い。
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町外から来ると駐車場がわからず素通りしてしまう
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ので案内を充実させてほしい。
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世代を超えて集まる夜も営業するお店が欲しい。
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古い建物を十分活用できていない。
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文化を重んじながら、歩きやすく通りの回遊性を良くしたい。
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本屋を中心とした情報発信ができると良い。




改修中の様子(写真提供 内町工場)
Photo| Kei Murakoshi